木には、それぞれ得意分野があります。杉、欅(ケヤキ)、檜(ヒノキ)——樹種によって特性が異なることは、多くの方がご存じかもしれません。しかしそれは入り口にすぎません。同じ種類の木でも、どこの山で育ったか、どの向きで生えていたか、どんな土壌に根を張っていたかによって、木の性格はまったく異なります。元気で積極的な桧もいれば、堅実で粘り強い桧もいる。人間と同じように、木にも個性があるのです。その個性を読み取り、一本一本に合った場所と役割を与えることが、木を使う職人の仕事です。

強さの秘密は、組み合わせにある

丈夫な家は、ただ強い木を集めるだけではつくれません。硬さ、粘り、しなやかさ、木目の通り方——木が持つさまざまな性質を読み取り、力が求められる箇所には頑強な木を、周囲には相性のよい木を組み合わせる。そうして適材適所に用いることで、建物全体に調和が生まれ、強度と耐久性が高まります。それを読み解くのが、木と向き合い続けた職人の目利きです。

木も人も、育った土地がある

さらに重要なのが、「産地」です。家を建てる土地と、使う木の育った環境が近ければ近いほど、木は新しい土地の気候に早くなじみます。人が、生まれ育った土地に近い気候の中で自然に暮らせるように、木もまた、育ってきた環境に近い場所で使われることで落ち着き、建物の一部として安定していきます。

その信念のもと、私は10年ほど前、岐阜県の東白川で理想の製材所と出会いました。戦後に植えられた東濃ヒノキが今まさに最適な樹齢を迎え、町全体でも林業を大切な産業として育てています。最初は、見知らぬ職人からの突然の電話だったはずです。それでも、木への思いを伝え、何度も言葉を交わしながら信頼を積み重ねてきました。今では、私たちの家づくりに欠かせない大切な仲間です。

その目で木を見て、はじめてわかること

木を眺めていると、自然とその木が担うべき役割が見えてくる——そうした見立ては、勘だけで身につくものではありません。施主さんの想いに向き合い、木の性質を見極め、家づくりを重ねてきた時間の中で培われていくものです。材木選びも、家づくりの大切な一部。一本一本の木を適材適所に活かし、住む人と木がともに長く生きていける建物をつくります。